009 月の時計・星の時計 〜コスモサインとか

先般コスモサインという天体系腕時計が復刻され限定発売されていたことを遅まきながら目にした。
「コスモサイン」の初代がCITIZENより発売されたのは1986年11月で、もうひとつの天体時計である「ムーンサイン」とともに
「コスモサーカーディアン」(COSMO CIRCADIAN:宇宙から受け取る生体リズム)というキーワードによってまとめ上げられた。
 
当時(今も)「月」ふぇちでもあったくまは、レトロ調ばかりでちっとも知的ではないムーンフェイズ時計のテイストに
不満を抱いていたこともあって、このコスモサーカーディアン・シリーズの考え方には大いに賛同した。
 
ま、毛のはえた時計好きから言わせると「所詮クォーツ時計」。 確かにわざわざお見せするほどのもんやないけど
「コスモサインが復刻されているのを発見した記念」にコレクションを紹介することにした。
思えばもう十何年も新しい腕時計を買うてへんなぁ。

 

●2005年7月29日追記●
どうやらコスモサインが再始動する兆しをキャッチ!  ついに天体時計部署が シチズン・アクティブ株式会社コスモサイン事業部として独立。
「コスモサイン・ムーンサインはアストロデアの時代へ」
"ASTRODEA"(Astronomical Diagram from the Earth)近日デビュー
天体時計に込められた"技と心"

何とワクワクする響き〜 「期待してイイのね」記念に記事を修正・追加したよ。




我々が日ごろ使用する時計は地球の自転をモデルとしている。 確かに自転は昼と夜をもたらし、生活のリズムの
マスター・クロックの役割を果たしている。 しかし身の回りにはこれとは別周期のリズムが存在する。
月の満ち欠け、地球の公転を基準とした星座移り変わり、星座中の惑星や彗星の運行など、マスター・クロックとは別の周期をもったこれらが互いに複雑に絡み合い多彩な暦を形作っている。
 
特に月の引力が潮の満ち干のほかに生体にも少なからず影響を与えていることは、バイオタイド理論を例にあげるまでもなく誰しもが認めるところであろう。 しかし月の引力を意識的に感じることはできないし、そんな人には出会ったことがない。 月齢と時角を常に知ることができれば、調子の良い時や逆にイライラするようなときに、何らかの因果関係を突き止めるヒントが得られないか? …という空想科学シリーズな発想が天体時計に惹かれた動機であった。
 
そこまで考えなくても、 日常とは異なる尺度を持ち合わせるということに魅力を感じられるなら
それだけで充分な気がするけどね。

CITIZEN CLUB LA MER
ムーンサイン 1986年
LMI43-3067 SV925

 
初めて買ったMOON PHASEがこれ。
スターリングシルバーのケースに球面サファイアガラスというブルジョワ仕様で定価4万円。 あまり値引きもなくくまの時計の中で最もお高いものとなった。
 
上が「月盤」で丸窓の形状で月齢を、丸窓の角度で実際の月の位置(時角)を知ることができる。
下は24時間計で昼夜の別を表示している。…実は月齢をセットするときにないと不便なのだ。
 
上が月の位置なのに対して下が太陽の位置を表していると考えればわかりやすい 。1984年に発売された初代ムーンサインでは下は太陽を表す円盤が回っていた。 あとでわかったことだがこれは第1世代ムーブメントを用いて作られた第2期のものであるらしい。

CITIZEN CLUB LA MER
ムーンサイン(恒星時付)1988年
LMP43-0325 SSPD

 
これは1987年末に発売されたムーンサイン第2世代シリーズに属するが、この異色のブルーフェイスモデルは1988年に設計者の要望で追加されたものらしい
 手に入れたのは1990年になってからだと思う。近所のディスカウントストアで投げ売りされているのを保護した。 CLUB LA MERはどちらかというとトラッドな傾向が強かったが、コイツはモダン。 サファイアガラス/ステンレスケース
 
メカはムーンサイン第2世代の恒星時盤付で、上記の月齢機能に加えて、太陽と 輝星(恒星22個)の出没判定機能、 地方恒星時表示機能、 天文薄明識別機能、 北極星の時角表示機能などの天文機能が付加された。
 
メタル製のベルトはとてもカッコ悪かったので革ベルト切って使っている。

CITIZEN コスモサイン
北緯35°星座全天表示型 1989年
LHQ46-0246 SS

 
コスモサインは平たく言えば、時計仕掛けの自動星座盤である。 表示方式の違いで、北天のゆがみが少なく星空全体を観察できる全天表示型と実際に眺めた感じに近いワイド南天表示型の2種類がある。 ともに北緯35度で見える夜空が描かれているが、昔ながら星座盤といえばやはり全天表示型ですな。
 
発売当初よりCLUB LA MERのシリーズであったコスモサインだが、このモデルは、よりカジュアルな「Lighthouse」シリーズに組み込まれ、スポーティなテイストに仕上げられている。 機能的にも従来のコスモサインを基に細かな改良がなされているようだ。
 
こちらも在庫処分に出くわしてGET。 ワイド南天表示型も買っておけばよかった…。

コスモサーカーディアン・シリーズ
の取扱説明書 vol.1(左),vol.2
 
取説と言うよりは、読み物満載の小冊子に仕上がっている。 ここでは前期版('86年)、後期版('88年)の両冊子とも興味深い記事に併せて、荒俣 宏をはじめ様々な分野の人がエッセイを寄稿しており、ユーザーがこの時計のコンセプトへのより深く理解できるようにつとめている。 
 
天文用語解説などの基礎情報の他に、西洋占星術(コスモサインの場合)やバイオリズム(ムーンサインの場合)を基にした時計を使った占い方法まで紹介されている。
 
杉浦康平を思わせる独特の編集デザインはエッセイストとしても参加している戸田ツトム氏ではないかと推測できる。

時計のセッティングは結構面倒
 
コスモサインは比較的簡単であるが、ムーサインは時計合わせが難しい。 特に恒星時付のモデルでは根気が必要だ!
 
針(月盤、星盤)を何往復も動かさなければならないので竜頭の小さいブルーブラックフェイスを合わせようとすると、 指の腹が凹んでツルツルになっちゃった。
 
オーナーの方は説明書を無くさないように。

2004年6月現在で発売中の
コスモサイン
 
現行では、「カンパノラ」シリーズの1アイテムとしてコスモサイン(北緯35度全天表示)が発売されている。
 
星座盤はかなり小さな扱いで、肉眼で全てを読みとることは至難の業。 ルーペ付属のようですが。
 
しかしなんやね。  17万8千円ですか…
先代のコスモサインなら5台分の値段でっせ。
値上がりした復刻版でさえも3台いけます^^)


"ASTRODEA"始動(2005年7月+8月追記)
 
あのコスモサイン/ムーンサインが"ASTRODEA"というキーワードの基に再始動するらしい。そしてシチズン・アクティブ株式会社コスモサイン事業部サイトには"COSMOSIGN/MOONSIGN FAN SITE"が併設され
これまで謎に包まれていたコスモサイン/ムーンサインの開発譚が非常に詳細に紹介されている。

(8月1日、ASTRODEAサイト正式にOPEN決定。そしてASTRODEAシリーズ発表!)

コスモサイン/ムーンサインの変遷
 
まずコスモサイン/ムーンサインを開発していたのが、たったひとりの技術者であったことは少々おどろかされた。 開発者である上原秀夫氏が自叙伝的に執筆した天体時計開発秘話のおかげで、これらシリーズのほぼ全貌が明らかになった。読み進めて行くうちに年代やリビジョンで混乱してしまったので、写真を集めて変遷チャートを作ってみた。(クリックで拡大)

開発秘話にも書いてあったけどこれまでのコスモサインやムーンサインは必ず「CLUB LA MER」や「Lighthouse」、「CMPANOLA」などのシリーズの1バリエーションとしてあつかわれて来たんやね。 これじゃデザインは必ず上位シリーズの縛りを受けるし、「コスモ…」本来のデザインコンセプトを通せるわけがないやないですか。

ムーンサインの初代の写真をはじめて見たときは正直言ってズッコケた。 明らかに勘違いした意匠は、5種類も作ったのに売れそうなのは一つもないという有り様。 なので、これから送り出されるASTRODEAシリーズには期待しちゃうからねー。

…とか言ってたら出ちゃったよ。
肝心のデザインだが、くまが思い描いていたものとは違った。けど機能主義に徹したもので天文屋受けはするだろうな。これまで高級や伝統(もどき)を追いかけてきた天体系だが一気にスポーツウォッチのようになった。 ムーンサインのすべての月齢が見えっぱなしなのが個人的にはひっかかる。 パテックの真似はしないにしても、理屈で読み取るのではなく盤上にさりげなく表現されていて欲しいものだ。 でも買っちゃおかなぁ。

 

 

その他の天体腕時計(2005年7月追記)
 
コスモサイン/ムーンサインは普及価格帯に天体時計の美しさと楽しさを実現してくれた功労者である。
ならばこれらのライバル的な腕時計は存在するのか? ということで少し調べてみた結果を報告しよう。


あくまでも普及価格帯で誰もが気軽に手に入れられるものという前提ですよ。

PLANISPHERE WATCH
 
プラニスフィア・ウォッチは海外の通販サイトでよく見かける天体腕時計だ。 スイス製の高輝度蓄光塗料をバックライトに描かれた星座盤はなかなかのもの。 そしてムーブメントは日本製。 …ちょっと待てよ、日本製の天体ムーブメントってコスモサインのほかにもあったの?
ひょっとしたらこれは手動でベゼルを回して併せる方式なのかも。しかも回るのはベゼルだけ? もしそうだとしたら天体時計といえるかどうか微妙なところだが。

実売価格はおおむね50ドル〜60ドルで、残念亜がら国内で販売しているところは見たことない。 ネイチャーショップの様なところに置いていそうなもんだが…。 ご存じの方は教えてください。
THINK THE EARTH PROJECT
project OO1WATCH nw-1
 
Think the Earth プロジェクトが手がけた地球型時計。  説明は本家サイトに詳細に語られているのでそちらをご覧いただきたい。

時間の起源は地球の自転。そしてその目印として地球から見た太陽の位置を基準とした。 この時計はそれらを俯瞰した状態を表しており、客観的な視点から地球と時間を捉えることができる。 北半球タイプのnw-1のほかに南半球タイプのsw-1がある。

ベゼルとコアは着脱可能で、とても美しく作られており、ぜひ手に入れたい一品てある。

写真はサイトからの無断転載。 手に入れたらオリジナルに差し替える予定だが、ご警告頂ければ即座にくまイラと差し替えたいと思う。
CASIO FISH IN TIME 844 1990年
 
G-SHOCKブレーク以前のカシオの多機能デジタル時計のうちの一つで釣り人のために開発された 。 現在でもProTrekシリーズとして進化したモデルがある。

カシオでは月齢表示のことをムーングラフと呼ぶが、これに対して天体表示機能を備えたコスモグラフ(ハレー彗星到来をカウントダウンするモデルだったかも)があったと聞く。

この時計は日出・日没時刻、月齢とその時角、朝夕(タイドグラフ)そしてサカナの獲れ時を表示する機能があるが、天体時計としてとらえるには異論はまぬがれない。
 
 
購入後一度も着用したことがない唯一の時計でもある…。
 

 

夢の天文時計たち
 
くまの安物時計コレクションなど見せられて、ココロがしおれてしまった方も多いかもしれない。
そんな方々のためにくまのオススメ、ほんまもんの天文時計をご覧いただくとしよう。
 
…でも時計好きならみんな知ってるけどね。

IWC PORSCHE DESIGN
ULTRA SPORTS MOON PHASE
年代・型番不詳(1986年
?)
 
これは、天文時計というよりは単なるムーンフェイズなんだが、さすがにPORSCHEDESIGN! くまが知る限りもっともクールな月齢時計。
 
この時計が、しばらくの間くまのムーンフェイズの理想型だったのだ。 お値段のほうも庶民に手が届く27万8千円!
 
ほっすぃ〜。
(くまが着けても似合わんよ。)

Patek Philippe
Grand complications 5102 G
"Celestial"

 
パテックフィリップのGrand complications 5102 G "Celestia"はコスモサインとムーンサインの機能を多層的に併せ持つ超精密天体時計だ。
構造イラストを見れば判るとおり月齢に併せて満ち欠けしながら、これまた正確に回転する星座盤の中を進行する。 
 
実売価格はおよそ$130,000(約1千4百万円)!
でもこれで驚いてはいけない。 この時計はシリーズの2作目で、先に原器とも言える"Sky Moon Tourbillon"というおよそ$800,000(約9千万円)の天文時計が存在した。
型番は5002、両面仕様で裏面が5102に似た星座盤(+月)になっている。 686個の部品からなり、年間
2個しか生産できないという。
 
こちらに5002/5102の詳しいオフィシャルFlashページあり

Ulysse-Nardin
"Astrolabium G. Galilei"
"Planetarium Copernicus"
"Tellurium J.Kepler Limited"
 
天文時計といえばユリスナルダンに決まってる(笑)。 なかでも天文時計3部作は機械時計史の記念碑的存在と言っても過言ではないだろう。 3部作とは「ガリレオガリレイ(1985年)」、「コペルニクス(1988年)」、「ヨハネスケプラー(1991年)」の愛称で呼ばれており、それぞれ異なった視点から天文を解釈している。 (正式名称はタイトル参照)
 
3部作中、第1作目の「アスロビウム・ガリレオ・ガリレイ」の美しさは圧巻。くまのココロはめろめろになってしまった。 いつかはきっとガリレオ・ガリレイ!と胸に誓ったお値段は約800万円。 あれ?前述パテック5102の約半額? "Sky Moon Tourbillon"の10分の1以下? やっす〜い。
(…幽体離脱している自分に気付かぬか〜)
 
ところでこうした複雑な天文時計は、再調整が至難の業、ガリレオガリレイの完全調整は実際に分解して行うため10万円ほどかかるらしい。
パテックの場合登録ユーザにはWebサイトから調整方法を確認できるようだ。




おまけ
 
読めない時計

SWISS ART SWATCH GZ120
"Wheel Animal"
(1991年)
 
天文時計とは全く関係ない
スイス建国700周年を記念して発売されたスウォッチで、スイス出身の4人のアーチストが担当した。  その1つ「ホイールアニマル」はNot Vital氏の作品。
 
ほかの作品には何とも思わなかったが、コイツにはちょっと惹かれた。 分針も秒針もなく時針代わり絵があるだけなので、時間の表し方は使用者が決めるしかなく、また正確な時間は分からない。
今何時?と訊かれてこれを指し示しても殴られるだけという優れものだ。
 
それでも慣れれば時間は分かるし、強制アバウトモードに入ることのできる時計として気に入っている。

 

もう一つおまけ(2005年7月追記)
 
Moon Face…月顔表示

Alain Silberstein
LA 24 HEURES 1987年

 
くまが安物時計を披露していたら、わしもわしもとまうご犬がなにやら持ち出してきた。 そうそう、まうご犬も手頃でカッコイイ安物クォーツ時計が好きだったよな。 スウォッチのキースへリングモデルも普段使いにしてたっけ。

で、これは…アランシルベスタイン、 webで調べてびっくり。なんとシルベスタインのデビュー作、1987年、国際宝飾・時計見本市(バーゼル フェア)で出品された3本のうちの1つやないですか。 クォーツゆうても、ETA社のETA.556-115を使こてますやん。 以降のモデルでもこの月顔よう見かけますな。

え?電池切れてるって。電池交換と調整で2万4千円ほどかかる? どひゃーそれで(旧)ムーンサインが買えますやん。

 

 


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