SA-007:「ザ・コンサイス」

コンサイスコンポブームが収束しつつあった1983年、テクニクス史上最小となるミニコンポが登場した。 名前はSA-007「ザ・コンサイス」

「007」はかつて自社ハイエンド機器をミニチュア化したスピーカにも付けられていた型番であることから、当時のハイエンドアンプのミニチュアというスタンスで制作されたことをうかがい知ることができる。

poorAUDIOへもどる

SA-007はほぼ180mm正方のマイクロコンポである。 くまやすは基本的に間口より奥行きの方が明らかに長い京町屋風「ミニコンポ」を 認めていないが、容積的にも明らかにこれが最小である。

例えるならば、松花堂弁当の一枡をお重として重ねたような印象。 片手に積み上げることのできるケーシングの中に様々な回路が色とりどりにちりばめられた様子を想像してみよう。 …このコンポの目指す美学が見えてくると思う。


SA-007のシステム構成

ザ・コンサイス SA-007はパワーアンプSA-007P、コントロールアンプSA-007C、チューナーSA-007T、カセットデッキSA-007Dの各専用ユニットからなる。 これにオプションとして12素子グラフィックイコライザSH-007Eが用意されていた。

それぞれのユニットはパワーアンプから専用線(miniDIN3pin)で電源供給を受ける設計になっているので、そのままでは他に転用できない。

New ClassA パワーアンプ SA-007P

大型メーターがひときわ目を引くシステムの中心。
心臓部には35W+35Wのシンクロバイアス回路:"ニュークラスA(new classA)"回路を搭載している。 "ニュークラスA"は、パワートランジスタのスイッチングをシンクロバイアス回路のダイオードのスイッチングに置き換えた、いわゆるトランジスタによるスイッチングひずみを改善した回路方式で、B級動作の効率の良さと、A級動作のスイッチング歪みの無さという利点を併せ持つ。

形状は明らかにSE-A3/A5のミニチュア版を意識しているデザイン。 電源ボタンの他に「SuperBass」というバスブーストスイッチがあり、小型スピーカへの対応と思われる。

FM/AMチューナー SA-007T
チューナー部は高精度クォーツシンセサイザ 回路による低雑音設計。 FM/AM各6局のプリセットが可能。 フラットケーブルによる接続のみでコントロールアンプにつながれており、電源、バックアップ電流の供給を受けている。

コントロールアンプ SA-007C
入力はPHONO、TUNER、TAPE1、TAPE2、CD/AUXx2でPHONOはMMのみでMCヘッドアンプは装備していない。 TUNERはフラットケーブルによる入力、TAPE1の入出力はminiDIN7pinによる専用アサイン。 

dbx搭載カセットデッキ SA-007D

従来のコンサイスコンポが克服できなかったのが、カセットデッキの大きさであった。 SA-007Dはカーオーディオのようにスロットローディングにすることで操作系・表示系を制約内のスペースに配置することができた。(このコンポの横幅180mmというのがそもそもカーオーディオでおなじみのDINサイズ)
このデッキの最大の特徴はdbxノイズリダクションシステムを搭載していることだ。LED式のピークレベルメータと併せて録音レベルを限界ぎりぎりまで調整することができる。 驚くべきは、dbxユニット単体よりもはるかに小型にできていることである。 純正のdbxユニットの中には一体何が詰まっているのだろう?

定格パワーアンプSA-007P:●実効出力:35W=35W(1kHz,6Ω,EIAJ) ●全高調波歪率:0.003%(1kHz,定格出力-3dB時) ●周波数特性:5Hz〜100kHz(+0〜-3dB) ●SN比:115dB ●外形寸法:180(w) x 79(H) x 186(D) mm ●重量:2.9kg
コントロールアンプSA-007C
●全高調波歪率:0.007%(20Hz〜20kHz,1V出力時)●SN比:81dB(phono),98dB(tuner,tape,aux)●周波数特性:phono/20Hz〜20kHz(RIAA±8dB),tuner,tape,aux/7Hz〜80kHz(+0〜-3dB) ●外形寸法:180(w) x 40(H) x 185(D) mm ●重量:0.8kg
FM/AMチューナーSA-007T
●FM感度:10.3dBf(0.9μV/75Ω,IHF'58) ●全高調波歪率:0.08%(mono)0.15%(stereo)●SN比:78dB(mono)●周波数特性:20Hz〜15kHz(+0.5〜-1.5dB)●実効選択度:65dB(±400kHz)●ステレオセパレーション:40dB(1kHz),30dB(10kHz)●外形寸法:180(w) x 40(H) x 186(D) mm ●重量:0.7kg
カセットデッキSA-007D
●ワウ・フラッタ:0.05%(WRMS)●周波数特性:メタル35Hz〜17kHz(+3〜-6dB,EIAJ)●SN比:dbxIN,90dB (WTD, 1kHz, 3%三次歪)●ダイナミックレンジ:110dB(dbx in/EXテープ)●外形寸法:180(w) x 79(H) x 174(D) mm ●重量:2.1kg
総合:●電源:AC100V,50/60Hz●消費電力:83W
●標準価格\165,000


改良の余地は

●スピーカターミナル:例によって使いづらい端子。初代ほどでは無いが、これも細っっっそ〜いケーブルしか挟めないし、無理に回すと、パリッ! …やってもた(汗)→というわけで交換

●冷却ファン:パワーアンプの背面には、オーバーヒート防止用のファンが装えられているが、コイツが回るのは20Wを越えたあたりの大音響時のみ。 こんな出力では聴かないので滅多に回るところに出会うことは無いが、夏場などは普段でも結構熱いのよ!
ながく使っていたいからパソコン用の静穏ファンを使って常時回転オプションのあるファンを作った


資料:元箱

こんな箱に入っていた。 本体や箱には商品愛称「ザ・コンサイス」の記述は一切無いが、取扱説明書には1カ所だけ「スーパーコンサイス007」の記述がある。 マニュアル作成時点、もしくは開発コード名が「スーパーコンサイス」だったのかも知れない。

梱包図


poorAUDIOへもどる
copyright 2003, KumanoKumayas, Allright Reserved